ゼクスギアファイバー・レビュー/意外と弾む
プレイの幅を広げるテクニカルギア
1番ボールを掴む感覚のあるZファイバーを使用。木材に近い感覚でありながらラケットの広範囲で正確な打球を可能とし、繊細なプレーで相手を翻弄する。
カーボン以外の特殊素材同士を組み合わせる編み込み方法を初めて採用。低反発でありながら、しなり(弾性)を兼ね備えておりボールに重さが出る。
反発力は程よく、ラリー志向の選手におすすめ。※ヴィクタスHPより画像を引用
硬めのラバーと相性ヨシ!ゼクスギアシリーズ1のボールの伸び
これまでゼクスギアアウト、インナーのレビューを挙げてきました。
いよいよシリーズ最後の一本、ゼクスギアファイバーのレビューです。
球突きをしてみたところ、予想外の結果に…
カタログの反発力は7.5、意外と弾む
ヴィクタス公式のカタログスペックでは、ゼクスギアファイバーの反発力は"7.5"となっています。
※ヴィクタスHPより画像を引用
この数字は同社のダイナセブンやファイヤーフォールFCと同等の弾みで、スワットよりも一回り弾む位置付けになっています。
購入する前は板厚が5.7㎜と薄め、インナーにフリースカーボンより若干弾む程度のZファイバーを搭載したラケットとしては、いささか弾みの評価が高すぎるように思っていました。
国際卓球さんの評価
国際卓球さんにお問い合わせした際は、ゼクスギアファイバーはスワットやダイナセブンより板厚が薄いため弾まない、
ヤサカのマークカーボンは同じ板厚で極薄カーボンが搭載されているため、基本的な弾みは同等だが、強打時はマークカーボンの方がボールが走る、
ワルドナーセンゾーカーボンに比べて中芯が薄いため、弾みで劣る、
といった回答をいただきました。
球突きで弾みと打球感を検証
カタログの評価値に対する疑念があったため、ラケットが到着して直ぐに球突きをしました。
比較対象はゼクスギアイン。
卓球台の上に2本のラケットを置き、15~20cm程の高さから同時にボールを落として弾み方を見ました。
その結果、ボールの自由落下程度の衝撃ではゼクスギアインとファイバーの反発力は同程度でした。
ゼクスギアアウトとインで同様の検証をした際もあまり差が出なかったのですが、反発力で1.5の差があるラケット同士でも大きな違いがないとは思いませんでした。
今度はラケットを手に持ち打球感の違いや球離れを確認したところ、当然ながらファイバーの方が打球感が手に響き、球持ちも長く感じました。
インナーの方は特殊素材ラケットらしい高い打球音、あまり手に響かない打球感。
ボールが離れるのはファイバーよりかなり速いです。
インパクトの強弱で打球感が変わるインナー、あまり変わらないファイバー
打球音は明らかにインナーの方が高く、ファイバー入りのラケットよりも硬さがあることは明白です。
それでも軽い打球ではゼクスギアインの方が手に響かないため、ゼクスギアインの方が打球感が柔らかい、同じくらいの硬さと感じる人もいるかもしれません。
強めに球突きをするとインナーの方は打球感が硬くなりますが、ファイバーの方は若干硬さを感じる程度です。
ゼクスギアファイバーが木材に近い打球感のラケットであることが伺えます。
試打篇
軽打での打球感
ラバーを貼って軽く乱打をしてみると、ラケット単体で球突きをしていた時よりもかなり打球感が柔らかかったです。
コルベルなどの純木材の5枚合板に近いポコポコした打球感ですが、そういった木材ラケットより若干振動が抑えられています。
そして、5枚合板のラケットのようにボールを掴みっぱなしという感じではなく、掴んだ後にトランポリンのようにボールが跳ね返る感覚が少しだけあります。
自分がどういったボールを受けたのか、打ったのかがよくわかる中で雑味が取り除かれた打球感だと思います。
強打での打球感
そこからインパクトを強くしていくと打感が硬くなります。
インナーファイバーのラケットと言うことですが、強く打てば打つほど普通の木材ラケットのような打球感に近づくように感じました。
ほとんど硬めの木材五枚ラケットの打球感ですが、そういったラケットよりもエネルギーのロスが少なく、ボールが走りますし、この手の球持ち重視のラケットにしては直線的な弾道も作り易いです。
合わせるラバーにもよりますが、中陣からでも打ち抜くスピードと球威は十分に持ち合わせていると感じました。
ミート系技術
板厚が薄いため、インパクトを強くするとラケットがしなりすぎるのではないかと思っていましたが、強インパクト時はラケットの硬さを感じられ、その硬さ通りの剛性を発揮してくれました。
ミートも変に落ちたり上に飛んでしまうことがなく、特筆してやり易いということはありませんでしたが、ゼクスギアアウトにやや劣るくらいのやり易さを備えているのではないでしょうか。
表ソフトや粒高の異質型の方でもこのラケットを使用している方がいるようなので、弾きと球持ちのバランスが優れたラケットなのだと思います。
ドライブ技術
やはりファイバーラケットと言うことで、非常に強いボールの掴みが特徴です。
木材ラケットと比べても、多少雑なアプローチをしてもボールを持って弧線を描いてくれるため、ドライブの掛けやすさと言う点では木材ラケット以上のものがあると思います。
掴みの強さと回転の掛けやすさを活かした対下回転ループドライブの質はゼクスギアシリーズでもぴかいちです。
ミートの感覚も悪くないので、ループからのスマッシュの展開を好むプレーヤーにもお勧めできると思います。
一方、対下回転スピードドライブは他のゼクスギアと比較してボールが軽くなってしまうようです。
上回転の時はあまり気になりませんでしたが、ボールを持ちすぎてエネルギーが少しだけロスするような感覚がありました。
このような掴みの強さは、ラバーの相性にも影響を及ぼしています。
あまり柔らかいラバーではボールが食い込みすぎて落ちてしまいますので、使用者の感覚で「少し硬い」と感じるくらいのラバーを選んだ方がよいでしょう。
柔らかいラバーでは、相手の強烈な回転のドライブに対してオーバーミスではなく、ネットミスの方が多くなりました。
前述しましたが、硬めのラバーと合わせれば威力と飛距離は十分で、中陣から一発で打ち抜くボールを繰り出したり、アウターラケットと引き合いをしても勝負ができる性能を発揮します。
個人的に、最低でもヴェンタスエキストラほどの硬さのラバーをフォアに貼った方がよいと思いました。
スポンジ硬度も硬め、シートも硬めで回転系の方がよいでしょう。
柔らかいラバーを合わせたダイナセブンとゼクスギアファイバーでは、ダイナセブンの方が良いボールが行きますが(柔らかいラバーでゼクスギアファイバーはボールが落ちる)、
硬いラバーを合わせた時はゼクスギアの方が質の高いドライブが打てました。
総評
概ね控えめな弾みの7枚合板程度ですが、あまり柔らかいラバーとの相性は良く無いという印象です。
合わせるラバーを間違わなければ、カタログに記載されているゼクスギアファイバーの反発力通りの弾み(反発力7.5)を発揮する反面、柔らかいラバーを貼った時の反発力は5~5.5相当だと感じました。
平均重量は85gですが、80〜84gの個体も多く見かけることができます。
重量が軽めのものが多いので、気兼ねなく硬くて重いラバーを貼れますね。
板薄ラケットの長所を伸ばしつつ、短所が余り目立たない良作ではありますが、私のプレースタイルには少し合わないところがありました。
なんやかんなでゼクスギアインのバランス+攻撃力がベストだと感じています。
このラケットも板厚5.9mmだったらメインラケットになり得たかもしれません。
これにてゼクスギアシリーズのレビューは完結。
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